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地学雑誌 2024 133巻 6号

2024 133巻 6号

2024年能登半島地震に伴った輪島市門前町八ヶ川河口部外浜部の隆起

2024年1月1日午後4時10分に発生した2024年能登半島地震(M7.6)に伴って能登半島北岸に沿って海岸線の顕著な隆起が見られた.とくに輪島市門前町鹿磯周辺では漁港防波堤壁に残された旧汀線を示す海棲生物遺骸の分布高度に基づき3.8∼3.9mの隆起が確認された(宍倉ほか,2024).
 鹿磯・川河口から黒島・高島を経て藤浜にかけての約4.5km連続する海岸に沿った浅海底は,2024年能登半島地震に伴って隆起した.写真中央の黒島漁港は完全に干上がっており,少なくとも3 m以上の隆起が確認された.砂浜海岸(写真中央下より)に位置する八ヶ川河口部では浅海底が隆起し.海岸線が150m程度海側へ前進した.新旧の汀線間には現汀線よりの微高地(明灰褐色部)とその内陸側に伸びる溝状の低地(暗灰褐色部・小水面部)が汀線に並行して認められ,外浜を構成するバーと沿岸トラフ(武田,2017)が隆起したものと考えられる.黒島漁港以南の海岸部にも同様な隆起に伴う外浜部の離水が観察される.
 地震性隆起海岸の例は,岩石海岸に残された波蝕棚やノッチの存在から各地で認識されてきたが, 砂浜海岸の隆起例の記載は少なく,また今後の波浪による浸食で長く保存されないと予想されることから, ここに紹介する次第である.
 写真撮影日:2024年5月22日 撮影高度:約300m.


(八木浩司・佐藤昌人・山田隆二)


文 献

武田一郎(2017):砂浜海岸.日本地形学連合・鈴木隆介・砂村継夫・松倉公憲編:地形の辞典.朝倉書店.294-295.

宍倉正展・行谷佑一・越後智雄(2024):第四報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起).地質調査総合センター.
 https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/noto2024/noto2024-04.html [Cited 2024/8/16].



総 説

中琉球の新たな地体構造単元「徳之島帯」

山本啓司・磯﨑行雄・岡本和明

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 447.

DOI:10.5026/jgeography.133.447

論 説

伊能図下図から見る伊能図の作図過程

星埜由尚

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 465.

DOI:10.5026/jgeography.133.465

地下地質に基づく第四紀後期の三方五湖低地の地形発達と三方断層帯の構造発達

石村大輔・加藤茂弘・岡田篤正・佐藤裕司

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 485.

DOI:10.5026/jgeography.133.485

内陸地殻およびスラブ内の繰り返し地震とその地震学的およびテクトニクス的意義
 —拡張フォールトバルブモデルの提案—

長谷川 昭・中島淳一

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 511.

DOI:10.5026/jgeography.133.511

小笠原諸島父島は21世紀も乾燥化しているのか
 —2000年前後の気候の違いに着目して—

鈴木健介・松山 洋

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 533.

DOI:10.5026/jgeography.133.533

短 報

長野県伊那市・美和湖東岸の中央構造線を例とした,
 ドローン写真測量による地形・地質構造の把握と有用性検証

森  宏・井上真生子・宿輪隆太・
三石真祐瞳・木村陽介・早川由帆・
碓井虎次郎・延原香穂・常盤哲也

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2024, 133(6), 549.

DOI:10.5026/jgeography.133.549

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