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地学雑誌 2022 131巻 3号

2022 131巻 3号

関東山地北縁下仁田の下部白亜系砂岩・泥岩—跡倉クリッペはどこから来たか—

西南日本から連続する中央構造線(MTL)は,群馬県西部下仁田地域を通過し,北側に領家帯の白亜紀花崗岩類や美濃・丹波帯(=足尾帯)のジュラ紀付加体が,南側に三波川帯の白亜紀高圧型片岩が広く露出する.MTLのすぐ南側には,低角度断層を介して三波川変成岩の上に特異な岩石・地層群がクリッペとして累重する.「跡倉クリッペ」はペルム紀花崗岩やホルンフェルス,非変成の白亜系–古第三系礫岩・砂岩など,どれも少量だが多様な岩石から構成される.1950年代から研究されはじめたが,その起源は長らく謎であった.写真は,下仁田南方の南牧川沿いに露出する逆転した跡倉層の下部白亜系砂岩・泥岩交互層である.近年,同層を含む関東山地の白亜紀砂岩中の砕屑性ジルコンのU–Pb年代が測定され(中畑ほか, 2015, 2016),跡倉層には原生代(25–15億年前)粒子が大量に含まれることが判明した.同じ関東山地でも約10km 南方の秩父帯の同時代砂岩とは大きく異なる後背地をもつこと,また西南日本では飛騨帯と舞鶴帯にのみ知られるペルム紀花崗岩を随伴することから,跡倉クリッペは関東でできた岩石群ではなく,もともと中生代日本の大陸側に起源をもち,二次的に長距離(最大100km程度)移動してきた岩体と推定される.こんにゃくとネギで有名な下仁田地域の地質には,日本列島のルーツに関する秘密が隠されている.地元を走る上信電鉄の車体に大きくペイントされた「跡倉クリッペ」の文字をみて嬉しくなるのは「撮り鉄」ファンだけではないだろう.


(写真・解説:磯﨑行雄)


文 献

中畑浩基・磯﨑行雄・小坂和夫・坂田周平・平田岳史(2015):関東山地北縁,上部白亜系跡倉層・栃谷層の砕屑性ジルコン年代パタン—飛騨帯と中央構造線南縁との弧横断方向の関連—.地学雑誌,124, 633—656.

中畑浩基・磯﨑行雄・堤 之恭・岩本直哉(2016):関東南部の浅海成白亜系の砕屑性ジルコン年代スペクトル—後背地表層地殻の更新に伴う前弧域砂岩組成変化—.地学雑誌,125, 353—380.



総 説

陸域下の低周波地震とその地震学的およびテクトニクス的意義

長谷川 昭・中島淳一

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2022, 131(3), 289.

DOI:10.5026/jgeography.131.289

論 説

後期更新世における肝属平野の地形発達
 —入戸火砕流堆積物下に埋没する阿多溶結凝灰岩台地の形成—

高波紳太郎

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2022, 131(3), 317.

DOI:10.5026/jgeography.131.317

猪苗代湖の湖底堆積物に記録された放射性セシウムの鉛直プロファイルに基づく
 福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムの将来予測

長橋良隆・片岡香子・難波謙二

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2022, 131(3), 339.

DOI:10.5026/jgeography.131.339

短 報

渇水が植生に及ぼす影響に関する研究
 —小笠原諸島父島における衛星リモートセンシングを用いた解析—

三好周斗・松山 洋

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2022, 131(3), 365.

DOI:10.5026/jgeography.131.365

寄 書

相模湾逗子町小坪の1923年関東大震災
 —証言と資料に基づく地震・津波・がけ崩れ—

蟹江康光・蟹江由紀

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2022, 131(3), 381.

DOI:10.5026/jgeography.131.381

地学ニュース

書評

  • 田邉 裕:境界の政治地理学—境界は動くのか—(佐藤英人)

協会記事

  • 理事会(令和3年度第5回理事会)
  • 2021年(令和3年度)東京地学協会メダル贈呈・功労賞授与および講演会

奥付

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