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地学雑誌 2025 134巻 3号

2025 134巻 3号

ブータンヒマラヤに咲くボンボリトウヒレン

ブータンは,ヒマラヤ山脈東部の南側に位置し,始新世にはじまったインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突により生じた造山帯における広域変成作用や火成活動を理解するうえで重要な地域である.国全体の地質構造については概略が明らかになりつつあるが,とくに国境沿いの北部山岳地帯や東部の地質には,依然として多くの不明点が残されている.
 国立科学博物館では,2021年度より五か年計画で分野横断型の総合研究「極限環境の科学」を実施しており,2024年8月にブータン北西部において地質および植物に関する調査を行った.この地域は寒冷かつ乾燥し,紫外線も強い,動植物にとって過酷な「極限環境」であり,高山域における植物と地質の関係を解明することを目的としている.
 本写真は,ジョモラリ山(標高7,314m)のベースキャンプ付近(標高約4,300m)で撮影したものである.手前に写っている植物は,キク科のボンボリトウヒレンである.淡黄色のぼんぼり状の構造は花ではなく,花を包む「苞葉(ほうよう)」と呼ばれる葉である.苞葉は,花を覆うことで温室のような空間を作り出して保護しており,寒冷な高山環境で生き抜くための工夫となっている.


(写真・解説:谷 健一郎 2024年8月17日撮影)




総 説

カンブリア紀から現世までの魚類相の変遷

中坊徹次

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 239.

DOI:10.5026/jgeography.134.239

論 説

歴史記録と地形学的考察に基づく
 八丈島での慶長九年(1605年)津波の遡上高の再検討

海田比呂子・後藤和久・石澤尭史・林  薫

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 261.

DOI:10.5026/jgeography.134.261

カンブリア系火山深成複合岩体中に挟まれる
 石炭系金山石灰岩の層序・ウミユリ茎板化石・放射年代

田切美智雄・大路樹生・安藤寿男・
塙 勝利・及川 晃・加藤太一

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 275.

DOI:10.5026/jgeography.134.275

房総半島九十九里沿岸域から湧出する天然ガスの産状と
 生物生産への影響に関する予察

吉田 剛・石井光廣・鈴木孝太・
小倉利雄・風岡 修・小島隆宏

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 293.

DOI:10.5026/jgeography.134.293

福島の山地森林のスギ立木における
 樹皮から木部に向かう放射性セシウムの分布と移行プロセス

新里忠史・佐々木祥人・雨宮浩樹・菅野 拓

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 309.

DOI:10.5026/jgeography.134.309

短 報

長良川・揖斐川沿いの河畔砂丘の発見と砂丘堆積物の後背流域の特定

杉田一真・須貝俊彦

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 323.

DOI:10.5026/jgeography.134.323

寄 書

大水深超高解像度海底地形観測の目指すべき対象

熊谷英憲・池上郁彦・金子純二

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2025, 134(3), 337.

DOI:10.5026/jgeography.134.337

地学ニュース

書評

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奥付

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