最新号

地学雑誌 2023 132巻 3号

2023 132巻 3号

紀伊半島南岸の「フェニックス褶曲」

紀伊半島南部に分布する古第三系∼新第三系の牟婁むろ層群佐本川さもとがわ層は,四万十帯南帯の付加体を構成する砂岩・泥岩互層である.そのなかには堆積物がまだ未固結時に形成されたさまざまな規模の褶曲構造が見られる.写真は和歌山県西牟婁郡すさみ町口和深くちわぶか付近の海岸で観察される褶曲の好例である.かつて重力性のスランプ褶曲と考えられていたが,場所によって褶曲軸の倒れる方向が正反対のものもあることから,現在では付加体形成時の高間隙水圧下で形成された構造と判断されている.とくに目を引くこの褶曲露頭は,付近の小字こあざの地名である天鳥あまどりにちなむ「フェニックス褶曲」という愛称をもつ.中央の「>」状褶曲上部の水平部分の長さは約5mあり,迫力のある景観を提供している.ちなみに,この露頭を観察するためには,事前に南紀熊野ジオパークセンターを通じてガイドツアーに申し込む必要がある.


(写真・説明:小松原純子 2023年3月28日撮影)




論 説

関東平野北西部の集村集落における屋敷林の変化

神品芳孝

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2023, 132(3), 197.

DOI:10.5026/jgeography.132.197

20世紀日本地学史を日記の読解から再考する
 —地学者望月勝海の生涯と仕事,1914–1963年—

山田俊弘・矢島道子・須貝俊彦・島津俊之

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2023, 132(3), 217.

DOI:10.5026/jgeography.132.217

硫黄–カルシウム剤を用いた透水性浄化壁による硝酸性窒素汚染地下水の原位置浄化

李 盛源・田瀬則雄

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2023, 132(3), 231.

DOI:10.5026/jgeography.132.231

短 報

沖縄島西方,慶留間島北部の礫岩質ビーチロックから採取した試料の14C年代

小元久仁夫・池田晃子・横尾頼子

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2023, 132(3), 247.

DOI:10.5026/jgeography.132.247

寄 書

文系学部において地球科学の履修を促す要因の分析—学生の意識調査による検証—

永田玲奈・三上岳彦

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2023, 132(3), 257.

DOI:10.5026/jgeography.132.257

地学ニュース

回顧録No.18

  • 90年間の学歴(2)—地球科学者として—
       杉村 新

書評

  • 佐野有司・徳山英一監修:4次元統合黒潮圏資源学(松山 洋)
  • 静岡県富士山世界遺産センター編:富士山学 第3号(奥野 充)

協会記事

  • 理事会(令和4年度第4回理事会)

奥付