目に焼きつく赤色の水平層は,約2億5千万年前(古生代ペルム紀末)に超大陸パンゲア内部の非海成ゲルマン盆地で堆積したZechstein層である.古生代最後の地質時代は,二畳紀(Dyas)と20世紀中頃まで呼ばれていた.その名前はドイツで識別されたRotliegende層と上位のZechstein層の二層からなることに由来する.しかし,後にウラル山麓ペルミ(Пермь) に産する同時代層が世界対比により有効であると評価され,二畳紀はペルム紀(Permian)と呼ばれるようになった.それでも,Zechstein層は,当時のパンゲア内陸部での強い乾燥気候下で堆積した赤色層,岩塩などの蒸発岩,含銅黒色頁岩などの独特の地層からなること,また保存のよいサンショウウオやゴキブリなどの化石を多産することから,当時の超大陸内部の環境記録として今なお重要視されている.
かつての東独西縁に位置するチューリンゲンの森(Thüringer Wald) は,ドイツ中央部の低い山地である.そのなかのイエーナ東方のCaaschwitz採石場に写真のZechstein層の好露頭がある.周辺には日本人にも馴染みの深い地名が散在する.例えば,アイゼナハはバッハ生誕地として,ワイマールはゲーテの長期居住地,バウハウス校の発祥地,また憲法で知られる.ほかにはイエーナは多くの地質学者が世話になった光学機器のツァイス社創業地,などなど.南ドイツから続く起伏ある地形もここまでで,北側には低い丘陵地と単調な平野のみが北海・バルト海岸まで延々と広がる.
(写真・解説:磯﨑行雄)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 311.
DOI:10.5026/jgeography.130.311
関東平野西部毛呂山丘陵と川島コアから発見された第四系最下部の指標テフラ
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 331.
DOI:10.5026/jgeography.130.331
小笠原諸島父島における降水量の季節変化に及ぼす台風の影響
—エルニーニョ⁄ ラニーニャ現象に着目して—
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 353.
DOI:10.5026/jgeography.130.353
岩城島産エジリンアルビタイト中のデーリー石とゼッツェル石(英文)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 369.
DOI:10.5026/jgeography.130.369
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 379.
DOI:10.5026/jgeography.130.379
赤石構造帯南端部に分布する下~中部中新統の露頭規模の変形構造
—西南日本弧東部の中新世の構造回転との関連—
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 403.
DOI:10.5026/jgeography.130.403
水月湖コア試料に含まれるテフラ層の対比から推定される
三瓶火山噴出物の化学的変動(英文)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 429.
DOI:10.5026/jgeography.130.429
2011年東北地方太平洋沖地震に伴って観測された火山地域での局所的沈降に関する
数値モデリング;InSARの視線方向変位に関する結果
—「地学雑誌,126巻,685–705,2017」への追記—
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(3), 445.
DOI:10.5026/jgeography.130.445