国際陸上科学掘削計画のもとオマーンオフィオライト掘削が2016‒2018年に実施された.日本の研究者チームが主導して,1億年以上前の海洋底を形成していた海洋地殻・マントル境界を貫く掘削を進めた.その結果,ハンレイ岩層(海洋地殻最下部)からハルツバージャイト層(マントル最上部)へ至る連続コア試料の採取に成功し,地殻・マントル境界部の新鮮なコア試料(左)を入手した.肉眼でも確認できる光沢ある粒子の多くは,もともと中央海嶺下でカンラン石だった結晶が,二次的変質により蛇紋石化したものである.右:写真中央の掘削装置を現地にもち込み,最大で400m長のコア試料を2本の掘削孔から採取した.また,掘削孔内の物性測定のために,2か所のロータリー掘削も行った.採取したコア試料には,海洋地殻最下部を構成していたハンレイ岩層からモホ遷移帯を貫き,マントル最上部を構成していたハルツバージャイト層が含まれる.今回の過去の地殻・マントル境界を貫く掘削は,現在進めている海洋底でのマントル掘削を目指す上での重要なマイルストーンとなった.
(高澤栄一・小野重明)
Overview of the Special Issue
“Hard-rock Drilling Science: Challenges of Mantle Drilling”
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 453.
DOI:10.5026/jgeography.130.453
特集号「ハードロック掘削科学—マントル掘削への挑戦—」巻頭言
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 457.
DOI:10.5026/jgeography.130.457
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 461.
DOI:10.5026/jgeography.130.461
マントル掘削でのみ解明される地球科学問題
—生命惑星海洋プレートの今を理解する—(総説)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 483.
DOI:10.5026/jgeography.130.483
ICDP Oman Drilling Project の成果と今後の展望(総説)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 507.
DOI:10.5026/jgeography.130.507
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 527.
DOI:10.5026/jgeography.130.527
ゴジラメガムリオン掘削から明らかにする
背弧海盆海洋下部地殻と上部マントルの組成と構造(総説)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 543.
DOI:10.5026/jgeography.130.543
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 559.
DOI:10.5026/jgeography.130.559
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 585.
DOI:10.5026/jgeography.130.585
ハワイ沖上部地殻掘削から海洋プレートの形成過程に迫る(論説)
Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2021, 130(4), 599.
DOI:10.5026/jgeography.130.599