最新号

地学雑誌 2015 124巻 6号

2015 124巻 6号

冬の真白き富士—新道峠からの富士山—

富士山は,四季折々いろいろな姿を見せてくれる日本の自然を代表する最高峰の秀麗な火山である.春から秋にかけては,空気中の水蒸気や塵が多くなるために,ハッキリした富士山が見える機会は少ない.しかし秋から冬は,空気が澄んでいるので雄大な富士山の形姿を見る機会が多くなる.なかでも山頂平均気温が−15℃以下になる厳冬には,富士山は清廉で凛として普遍的価値をもつ荘厳で崇高な山そのものを見せてくれる.
 写真は,富士山の北麓に面した御坂山塊にある新道峠(山梨県)から撮影した.笛吹市の芦川から林道に入り,終点に車を止めて,稜線まで登り,20分ほど尾根道を歩くと峠にたどり着く.この場所からは眼下に河口湖を臨み,真正面に均整のとれた富士山を見ることができる.ここから撮る富士山は,ヤマツツジが新緑に彩をそえる5月末〜6月初めもよいが,冬の雪や樹氷,霧氷に飾られた姿が際だって立派で,霊峰富士らしくてよい.

(村松茂貴(山梨県笛吹市在住)2014年2月5日撮影;説明:佐野 充・村松茂貴)


特集号:富士山をめぐる人文地理学研究—観光を中心に—

Overview of Special Issue: Human Geographical Studies of Mount Fuji Region Focusing on Tourism(英文)

Masaaki KUREHA, Toshio KIKUCHI, Mitsuru SANO and Mitsuru YAMAMOTO

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 877.

DOI:10.5026/jgeography.124.877

特集号「富士山をめぐる人文地理学研究—観光を中心に—」序説

呉羽正昭・菊地俊夫・佐野 充・山本 充

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 887.

DOI:10.5026/jgeography.124.887

近世期における富士山信仰とツーリズム(総説)

松井圭介・卯田卓矢

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 895.

DOI:10.5026/jgeography.124.895

絵画に表現された富士山(総説)

中西僚太郎

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 917.

DOI:10.5026/jgeography.124.917

富士山をめぐる北麓地域住民の環境・景観意識(総説)

尾藤章雄

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 937.

DOI:10.5026/jgeography.124.937

日本人の富士山観の変遷と現代の富士山観(短報)

田中絵里子・畠山輝雄

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 953.

DOI:10.5026/jgeography.124.953

富士山麓における別荘地の開発と利用形態(短報)

佐藤大祐・澁谷和樹

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 965.

DOI:10.5026/jgeography.124.965

山梨県山中湖村における保養所の特質とその変容(短報)

渡邊瑛季

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 979.

DOI:10.5026/jgeography.124.979

ユネスコの追加勧告にみる富士山の世界文化遺産としての課題(論説)

鈴木晃志郎

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 995.

DOI:10.5026/jgeography.124.995

富士山麓地域における観光行動の特徴—着地からの旅行距離に着目して—(論説)

杉本興運・小池拓矢

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 1015.

DOI:10.5026/jgeography.124.1015

旅行ガイドブックにみる富士山観光のイメージ変化
—『るるぶ富士山』の目次を対象としたテキスト分析—(短報)

有馬貴之

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 1033.

DOI:10.5026/jgeography.124.1033

富士山北西斜面御庭付近のカラマツ低木林はなぜ維持されるのだろうか?
—御中道巡りの魅力の再認識のために—(論説)

岡 秀一・白川亜沙子・菅野洋光

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 1047.

DOI:10.5026/jgeography.124.1047

富士山周辺地域における農業的土地利用変化とその地域性(論説)

太田 慧・菊地俊夫

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), 1061.

DOI:10.5026/jgeography.124.1061

口絵

口絵1:富士山麓の土地資源を活用したさまざまな観光

菊地俊夫

Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 2015, 124(6), xix.

DOI:10.5026/jgeography.124.xix

地学ニュース

回顧録(No. 9)気候と地球環境の研究史のひとこま

  • 吉野正敏
  

平成26年度助成金報告

  • 長野県の湿原でのボーリング掘削による山間小河川の河床変動の解明
    —氷期–間氷期サイクルとの関係から—(植木岳雪)
  • ネパール,ショロン・ヒマールにおける氷河変動と地域社会への影響(朝日克彦)
  • ヒマラヤにおける氷河災害の発生傾向の解明と理解普及の試み(小森次郎)
  • 東北地域における高齢離職就農者の農業経営とその役割(植村円香)
  • 富士山とその周辺地域における大雪・スラッシュ雪崩の気象要因と振動特性(山川修治)
  • 第9回海洋と地球の学校実施にかかる教育活動(平野直人・第9回海洋と地球の学校実行委員会委員)
  • 甑島列島における白亜系を含む東アジア東岸の白亜紀後期の海生動物相の復元(三宅優佳)
  • 妙高火山東麓の変動地形とくに新たな活断層の研究(高野武男・藤田 剛・長谷川 正・大原 剛・仙田幸造・山田雅晴)
  • 13th International Ichnofabric Workshop(第13回国際生痕ファブリックワークショップ)開催報告(奈良正和)
  • IGCP(地質科学国際研究計画)608 第2回国際シンポジウム
    「白亜紀のアジア–西太平洋地域の生態系システムと環境変動」(安藤寿男)

書評

  • 清水長正・澤田結基編:日本の風穴—冷涼のしくみと産業・観光への活用—(平井幸弘)
  • 泊 次郎:日本の地震予知研究130年史(ロバート・ゲラー)
  • 新刊紹介

協会記事

  • 理事会(平成27年度第4回理事会)

会告

  • 東京地学協会平成28年度研究・国際集会等助成金交付申請の受付について

奥付